朝、いつもと変わりが無い一日の始まりを告げるチャイムが鳴り響く。
その音を聞いた生徒たちはいっせいに教室に入り始める。
でもその日、フェイトの心中は少しだけ穏やかではなかった。
だってそれもそのはず、いつもは自分と一緒に学校に行っているはずのなのはが、
今日に限って、遅刻ぎりぎりの時間に現れたのだから。
しかも、理由を聞こうとしても答えてくれない。
そんなわけで、フェイトは今、もどかしい思いをしている。
「フェイトちゃーん? どないしたんや?」
はやてが隣の席から話し掛けてくる。
「うん………、なのはがね、なんかおかしいなって」
「ああ、今日は一人で来とったね。
寝坊でもしたんとちゃう?」
はやての冗談を聞いても表情を曇らせたままのフェイト。
そんな様子のフェイトが気になるのか、はやては話題を変え始める。
「今日、お兄ちゃんの入学手続きするんよ」
「え、じゃあひかるもここに通うことになるの?」
期待通りの反応をしてくれたことに対して微笑むはやて。
その話に更に食い込んでこようとするフェイト。
「で、いつから通い始めるの?」
「早ければ来週やろな。 遅くても二週間後には」
「クラスとか、一緒になれるかな」
「さー、そればっかりは運に頼るしかないやろ」
先ほどの会話の雰囲気も消え、いつもの表情になってきたフェイト。
そんなフェイトを見て、はやては少しだけ安心する。
そんな矢先、二人の背後に近づく一つの影。
その影はゆっくりと歩み寄り、フェイトの真後ろで止まる。
「フェイトちゃん」
突然自分の後ろから聞こえた声にびっくりするフェイト。
恐る恐る振り返ってみると、そこにはなのはが立っている。
今まで見たことも無いような、感情のまったく無い顔で。
「フェイトちゃん、ちょっと話があるんだけど、いいかな」
「じゅ、授業もうすぐ始まっちゃうよ………?」
「大丈夫だよ、すぐに終わると思うから」
そう言って教室を出て行くなのは。
あとに取り残されたフェイトは困惑気味にはやてに尋ねる。
「これって、行ったほうがいいよね………?」
「うん。 そのほうがええやろな」
「じゃ、行ってきます………」
暗い雰囲気をかもし出しながら教室を出て行くフェイト。
引き戸を右に開け、左右を見る。
するとなのはが左側の階段の近くにいるのが見えた。
できるだけ小さい音になるようにドアをゆっくりと閉め、なのはのもとへ向かう。
そんなフェイトをいざなうかのように階段を登って行くなのは。
そして二人は階段の踊り場で向き合う。
なのはの目には、あまり感情が込められていない。
無機質で、無感動にフェイトのことを見つめている。
対してフェイトの目には不安と焦燥が色濃く出ている。
やはり、どれだけ大人びていてもまだ小学六年生。
大好きな友達の態度が変貌すれば、気にはなるだろう。
そんなフェイトになのははゆっくりと語りかける。
「最近さ、フェイトちゃん、ひかるくんのことばっかり見てるよね」
「え、そ、そんなこと無いよ………」
「嘘、絶対にそうだよ」
少し言葉を強めるなのは。
「ねぇ、なんでなのはは怒ってるの?」
「別に怒ってはいないと思うよ、ただ………」
「ただ?」
フェイトが尋ね返すととたんに口ごもるなのは。
「ただ、どうしたの?」
口ごもり、うつむいているなのはに疑問をぶつけるフェイト。
それに答えられず、ただ立っていることしかできないなのは。
非常に気まずい雰囲気の中、いつまでもたち尽くす二人。
とっくに授業は始まっているというのに。
「あのね」
「うん」
「私ね、たぶん嫉妬してるんだ。
フェイトちゃんがひかるくんのことばっかり見るのが、嫌、なんだと思う」
「な、なのは……………?」
突然の告白に目を丸くするフェイト。
そんなフェイトの手をとって、自分の胸元に持ってくるなのは。
「べ、別に、いつでも私のことだけ見てて欲しいっていうわけじゃないよ?
でも、やっぱりほら、私たち、言わなくっても親友でしょ?
だから、その、一緒にいるときくらい、大事にして欲しいなって」
「あ、いや、えーと、その………」
赤面しておろおろするフェイト。
「そ、それってその………」
「うん、その、私、フェイトちゃんのことも、はやてちゃんのことも、ひかるくんのことも好きだから、
だから、すごいわがままだけど、その、差別みたいなこととかってされるのも、するのも嫌だから………」
「あ、あのね、なのは。 それって違う意味での話………」
「だから、お願い。 みんなで仲良くしよ? 誰か一人だけっていうのは、ちょっと嫌だから………」
その『みんな』で、というところに疑問を感じるフェイト。
だがそんな感想は一瞬で心の奥にしまいこむ。
それよりも一番聞きたいこと、それは。
「なのは、正直に答えてくれる?」
「いいよ」
「今までの話って、別にその、関係とかないでしょ?」
フェイトの質問に答えないなのは。
それを踏まえてフェイトは質問を続ける。
「その、内容とか支離滅裂だし、主題が伝わってこないし、どうかしてると思うんだよね」
「そ、それで?」
「だ、だから、その………」
フェイトは顔を真っ赤にして一瞬戸惑ってから、
「私にかまってもらえなくて、寂しかったんでしょ?」
「えと、その、………正解です」
「なのは、別に遠慮とかしなくていいんだよ?
私はいつでもオッケーなんだから」
「あ、ありがと」
「でね、なのは」
これまでに無い笑顔を見せるフェイト。
「今日は何処へいこっか」
「何処でもいいよ、フェイトちゃんの行きたいところ」
「それは困るよ。私の行きたいところはなのはの行きたいところだから」
「じゃあ、第三者に選んでもらおうか」
そう言って階段を下りていくなのはに『誰?』と聞くフェイト。
立ち止まり、フェイトのほうに向きながらなのはは言う。
「フェイトちゃんの、大好きな人に、だよ♪」
「なーのーは、茶化すのもいい加減にしてよ」
そう言ってなのはに抱きつくフェイト。
きゃはは、といいながら階段を下りていく二人。
「でもすきなんでしょ、ひかるくんのこと」
「うん、大好きだよ」
「じゃあ、頑張らないとね」
「そう………、だね」
廊下を小走りにかけていく二人。
もちろん授業はすでに中盤に差し掛かっている。
「ねぇ、フェイトちゃん」
「なに? なのは」
「今日のデートは、二人っきりでしようね」
「うん♪」
その後、教室に戻った二人が罰当番をさせられたことは、別のお話。
あとがき、
こんばんは、作者です。(執筆時午後九時)
今回もあとがき、もとい言い訳をします。
まず、途中の文すべてに対してすいません。
もう自分でも何かいたのかわかりません。
やっぱり魔王さま書くのは難しいなあ。
精進が足りない証拠です。
それとリク主の佐々木様。
ごめんなさい、これって百合に入りますか?
なんか自信がもてないというか、なんと言うか。
う〜む、こうなったらいつかリベンジをしてやる!
というわけで佐々木様、リクがあれば気軽にどうぞ。
むちゃくちゃ頑張って書かせていただきます!
それでは。