「天上の宝石赤く染める〜♪ 奇跡の種拾い集めて〜♪」

 

「ひかるくん、何歌ってるの?」

 

「まっしぶわんだーず」

 

「何?それ」

 

「テスタロッサさんに聞けばわかるはず」

 

「ふ〜ん」

 

ひかるはのどの調子を確かめるように軽く声を出す。

透き通った女性のような声、まだ変声期を迎えていない声が響く。

 

「ねぇ、他には何か歌えるの?」

 

「そうだなぁ………、じゃあ、これ」

 

ひかるは切ないバラードを一曲歌い切る。

 

「すごーい!本物の歌手みたいだね」

 

「高町さんは何か歌えないの?」

 

「う〜ん、何か歌えたかなぁ………」

 

なのははしばらく考えた後、ゆっくりと歌いだした。

 

「愛おしい日々を刻み込んだAmulet♪ in my precious days〜♪」

 

「………やはり本職にはかなわないのか、がっくり」

 

「ふぇ!? な、何? どうかした?」

 

「いや〜、べっつに〜」

 

「ひかるくん、他には何か歌えるの?」

 

「えーとね、これで良いかな」

 

ひかるはのどを軽く鳴らす。

 

「無限大な夢のあとの 何もない世の中じゃ♪

 そうさ 愛しい 思いも負けそうになるけど♪

 Stayしがちなイメージだらけの 頼りない翼でも

 きっと飛べるさ♪ Oh My Love〜♪」

 

「わ〜♪ すっごーい!」

 

「はい、じゃあ次は高町さんの番」

 

「はい、それじゃいっきま〜す♪」

 

なのはは目を瞑る。

 

「優しい気持ちに 守られて♪

 きっと ずっと 甘えてたね♪

 大切にしてくれた my love…

 みんな忘れない〜♪」

 

「それじゃ次これいっきま〜す!」

 

「ちょっと待ったぁ!!」

 

ひかるが息を吸い込んだところではやてが乱入してくる。

不意を突かれたひかるは激しく咳き込む。

 

「なにすんだコラ!」

 

「なんや二人で楽しそうなんやもん。私も入れて」

 

「いいよ」

 

「はやっ!」

 

なのはのマッハな回答にひかるが驚く。

 

「それじゃ三番、八神はやていっきま〜す!」

 

はやてが何処からかマイクを取り出す。

 

「残酷な天使のテーゼ 窓辺からやがて飛び立つ♪

 ほとばしる熱いパトスで 思い出を裏切るなら♪

 この空を抱いて輝く 少年よ神話になーれっ♪」

 

「これはちょいとまずい気が………」

 

「かまへんかまへん。どこでもやってることや」

 

「本当かな………」

 

微妙な抗議をするひかる。

しかしそれを気にも留めず、事態は加速していく。

 

「じゃあ、次は私!」

 

なのはがはやてからマイクを引っ手繰る。

 

「愛も罪も夢も闇も〜♪ 今すべて身にまとって♪

 君の力 僕の心〜♪ 重なり合った瞬間♪

 何が〜生まれる♪ Do you believe in destiny?〜♪」

 

「これわかる人いるかな……」

 

「気にしない気にしない。そしたら次はフェイトちゃーん!」

 

「え? わ、私?」

 

マイクを渡されて困惑するフェイト。

そしてそれを楽しそうに見つめるなのはとはやて。

 

「というかテスタロッサさん、いつからいたの?」

 

「はやてが一曲歌った後ぐらいから………」

 

「はーい、そんなこときにしな〜い!」

 

「そうそう、今は楽しめばええんやーっ!」

 

「って言ってるけど、どうするの?」

 

「よ、四番、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン、行きますっ!」

 

フェイトが息を吸い込む。

 

「時空を越え刻まれた 悲しみの記憶♪

 まっすぐに受け止める 君は光の女神♪

 あの日胸に灯った 永遠の炎♪

 深い闇解き放って 自由の扉開いてく〜♪

 強く果てない 未来へ〜♪」

 

フェイトが歌い終わると同時に三人から拍手が起こる。

 

「さすがはオリコン二位。見事としか言えない」

 

「私も」

 

「そ、そうかな………」

 

「それじゃ次はお兄ちゃん! ほれはよう歌って〜な」

 

「はいはい」

 

ひかるはマイクを構える。

 

「記憶だって 永遠になんて 残らないものと思い知って♪

 僕はずっと かきむしって 心の隅っこで泣いた そして どうか♪

 なくさないでよって 高架下 過ぎる日々を♪

 後悔してんだよって そう言い逃した あの日〜♪」

 

「これこそ知ってる人少ないんとちゃう?」

 

「かもなあ」

 

「それじゃ次は………」

 

「私! それじゃいっきまーす!」

 

なのはがマイクを奪う。

 

「忘れないで 見つめることを〜♪

 今できるでしょう?〜♪

 今しかない この時間を〜♪

 あなた次第で REAL LIFE 流れゆく♪

 REAL HEART 変わりゆく♪」

 

「これは結構メジャーだな」

 

「私歌えへんよ?」

 

「それは作者のせい」

 

「じゃあ、次、いいかな?」

 

「どーぞ〜」

 

ひかるがフェイトにマイクを手渡す。

 

「曇りのないこのこころを 遥か照らす青い星よ♪

 どんなときも歩き出せる 遠く近くきらめき 見守ってくれるの〜♪

 胸の奥にあふれるのは 涙よりも愛にしたい♪

 祈りのように旅は続く 導いていつの日も〜♪ 

 小さな宝石よ 星空のスピカ♪」

 

「あ! じゃあ私これ歌う!」

 

なのはがフェイトからマイクを奪う。

 

「銀河を舞う天使の囁き 確かな記憶を辿って♪

 これからきっと生まれてく 真実へのトビラ♪

 どんな冷たい暗闇に縛られていても♪

 僕は知りたいから 決して止まらない〜♪」

 

「ある意味での東西対決」

 

「これにはちょいと圧巻や」

 

「じゃあ次はひかるくんとはやてちゃん!」

 

「兄妹デュエットだね」

 

「えー………?」

 

「ほんま………?」

 

「ほら速く速く」

 

なのはがマイクをひかるとはやてに手渡す。

 

「仕方ない、あれでいこう」

 

「そやね。 ここまで来ちゃったら出し惜しみするほどのものやないし」

 

ひかるとはやてが息を吸い込む。

 

「「私だけの あなたをもっと知りたい♪

  心 すべて みせてほしいよ♪

  どうか どうか うなずいてください♪

  涙こぼれないように 見上げた〜♪

  闇の向こう 輝きだす Starlight〜♪」」

 

「歌唱力抜群………」

 

「というか、これでくるんだ………」

 

「しかも二番のサビってところがにくいね」

 

「次はそっち二人のデュエットね」

 

ひかるとはやてがなのはとフェイトにマイクを手渡す。

 

「がんばろうね、フェイトちゃん」

 

「うん、なのは」

 

二人がリズムを取る。

 

「「強く 優しく 翼に風を〜♪

 shake up 初めて 気づいて 委ねて take a shot♪

 見渡したら 君がいて♪ 

 ためらう事なく戦う限り 失うものなどない♪

 震えて 目覚めて 尋ねて pave the way♪

 迷わないで君と行く♪

 どうして戸惑い続けてきたの?

 晴れやかに勝ち誇れるように 無数の願い 掴み取ろう〜♪」」

 

「おお、無印」

 

「お兄ちゃん。それはネタバレや」

 

「じゃあ次は………、みんなで歌おう!」

 

「え? ひかるのソロじゃないの?」

 

「私もそれ期待しとった」

 

「みんなで歌ったほうがいいよ」

 

「じゃあさっさと歌おう。行数も残り少ない」

 

「了解や〜♪」

 

四人がマイクを持つ。

 

『手と手の温もりが 僕を強くする〜♪

 積み重ねた思い 空を駆け抜けて〜♪

 

 風になるこの願いが 涙さえ乾かして〜♪

 解き放つ力が 剣になり 突き抜ける〜♪

 

 きっと 終わりは始まりの唄〜♪

 羽ばたいた 鳥の唄〜♪

 戦う意味を見失わないで 祈りよ星になれ♪

 

 今はともに燃やした焔を 明日への灯火にして〜♪

 震えてもいいから ぐっと前を見よう♪

 この胸に小さな勇気と〜♪ 奇跡を〜♪

 

 

 気づけば傍にいる なんて暖かいの〜♪

 まるで花のように いつも 寄り添って〜♪

 

 本当の宝物が 何なのか気づいたよ〜♪

 もう二度と迷わない 君の為に 僕の為に〜♪

 

 きっと 涙は虹に変わって 七色に煌めくでしょう〜♪

 心と心の架け橋になり 刹那でもいいから♪

 そして大きな翼を広げ あの丘の太陽より〜♪

 とびっきりの顔で 無邪気に笑うんだ♪

 ただ空は光りを待ってる〜♪ 飛ぼうよ〜♪
 

 

 

 やがて僕や君が大人になって 夜に泣いてても〜♪

 このかけがえのない歴史が未来の 地図になるだろう〜♪

 さあ今生まれゆく 新たな道を どうか惑わずに〜♪

 ほら見上げてごらん 地平線から 命が息吹くよ〜♪

 

 

 

 きっと 終わりは始まりの唄〜♪

 羽ばたいた鳥の唄〜♪

 戦う意味を見失わないで 祈りよ星になれ♪

 

 ぎゅっとぎゅっと繋いだ心を 絶対に忘れないよ〜♪

 確かなことは今 旅立つ僕たちが♪

 

 夜明けより 輝いてること〜♪

 笑顔で… 振り返らないで… 行こうよ〜♪』

 

 

四人の歌声は、海鳴市のいたるところまで響きましたとさ。

 

 

 

おしまい。

 

 


 

 

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