その日、八神ひかるは散歩に出かけたくなった。

なぜか、なんて事を彼は知らない。

時折ふと思いついたことをしたくなる、

それが、人間ってものだから。

 

そんなわけで彼は住宅街の中を歩き回っている。

朝、八神家を出てからそろそろ一時間だ。

 

それほどまでに面白いものがあるのか、と問われると、そうでもない。

ならばなぜ?と思う人がいるかもしれないが、

そのあたりは自分を重ねてみて欲しい。

 

貴方だって、時折意味も無くうろうろしてみたくなることがあるはずだ。

それと、今の彼の行動は酷似していると言ってもいい。

 

……少し私が前に出すぎてしまったようだ。

それでは、物語に移ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「晴れ、ときどき曇り、ね」

 

ひかるは天気を気にしながら道を歩く。

 

空の色は灰色に沈み、雲が折り重なるようにして層を作っている。

今にも雨が降ってきそうな空を見ながら、八神ひかるはぶらぶらと歩きまわっていた。

 

片手にコンビニで買ったパンや牛乳を持ち、

それらを食しながらひかるは歩いていく。

 

今日は平日、本来なら学生や児童は学校へ行くはずである。

それなのにひかるが学校へ行かない理由、それは単純。 

 

はやてたちが通っている学校、つまり、

私立聖祥大学付属小学校への転入手続きを行っていないのだ。

 

それに気づいたのが昨日。

そしてみんなで慌てて準備した。

 

夏休みの最終日にはやてたちに大迷惑をかけてしまったが、

それはそれでいい思い出になった、とはやては言ってくれた。

 

そして、転入手続きが行われるのは今日。

八神ひかるがはやてと一緒に学校に通い始めるのは速くて三日後。

 

それまで何もすることは無い、というのでひかるは散歩に出たわけである。

 

 

「それにしても、本当について行かなくてよかったのかなぁ……」

 

コンビニで買ったジャムパンをかじりながらひかるは歩く。

行く手の空はいまだに曇っていて、すぐにでも雨が降り出しそうだ。

 

「まあなんにせよ、だ。 これからは学校行くわけだしね。 今のうちに暇な時間をすごさせてもらいますか」

 

そう言うとひかるは近くの公園に飛び込む。

そしてそこの遊具を使って遊ぶこと一時間。

 

 

「つ、疲れた………」

 

 

疲労困憊して倒れてしまった。

 

 

「くそ……、完全なる体力不足だなこりゃ………」

 

よっこいしょ、と掛け声をつけてひかるは起き上がる。

 

「あーくそ、家に戻ってゲームでもするか。 でもヴィータには勝てないしなー」

 

どうしようどうするか、とひかるが考えていると、

不意に猫が現れた。

 

その猫はきょとんとしているひかるに近寄ってきて頬擦りしてくる。

 

「なに? 餌でも欲しいのかよ」

 

ひかるは袋の中からちぎったクリームパンを取り出すと猫に与える。

それを嬉しそうにがっついて食べる猫を見てひかるは目を細める。

 

「おいしいかー? ほれ、も一つやる」

 

ひかるが新たに与えたパンくずをおいしそうに食べる猫。

それを見たひかるはそうっとその場を立ち去る。

そしてそれを見た猫はひかるの後をついていく。

 

「お前な、ついてきても飼えないぞ、家じゃ」

 

あくまでもつっけんどんに返すひかると、

そのひかるを純粋な目で見つめる猫。

 

視線に耐え切れなくなったひかるは歩調を速めてその場から逃げる。

それを全力ダッシュで追いかけてくる猫。

 

「この……! あーもう仕方ないなぁっ!」

 

ひかるは転移魔法を実行、その場からかなり離れた位置に出現する。

周りに人がいないことを確認してからひかるはゆっくりと歩き出す。

 

「んー、何しようかな………」

 

ひかるが転移してきたのは海鳴公園。

この時間帯、いるのはお年寄りくらいなものだ。

 

………場所を気にしないカップルとかもいるが。

 

だがしかしひかるはそんな人々にはめもくれず公園を出て行く。

はやての家から海鳴公園はそれほど遠くは無いが、

やはり時間帯的にも小学生っぽい子供がうろちょろしているのはまずいだろう、という判断だった。

 

どうも普通の人とは違う一日を送っているひかる。

というよりは『日常』をあまり知らないというのが妥当なのかもしれない。

 

「買い物でもしてくかな………」

 

ひかるは目に付いた店に入っていく。

店内は綺麗に整っており、床には塵一つ無い。

 

店内を見回して品物を物色するひかる。

だがもともと欲しい物もないので、ただ店内を歩き回るだけであるが。

 

それでも人間というものは見ているうちに欲しがるものが出てくる訳で、

そのせいかひかるはとあるコーナーの前で立ち止まってしまった。

 

 

 

「これをお求めですか………?」

 

 

店員が笑顔を引きつらせながらひかるに尋ねる。

ひかるはその言葉を無視して品物を選ぶ。

 

丁寧に一品一品見比べ、吟味していくひかる。

そのあまりの真剣さに思わず声をかけられない店員。

 

十数分続く沈黙の時間。

それは店員にとっては一時間に匹敵するものであったし、

ひかるにとってはたかだか数分足らずに感じるものであった。

 

「あの………、お決まりでしょうか……」

 

「はい」

 

ひかるのその言葉に店員は目を輝かせる。

そして同時にある疑いも心の中に秘めて。

 

 

「これください、できればラッピングもして」

 

 

ひかるが指差したのは青いサファイア。

そして真っ赤に輝くガーネットだった。

 

もちろん、どちらも本物。

値段は数百万円はする代物だ。

 

子供にそれが買う事が出来るのかといぶかしむ店員に、

ひかるは黒光りするカードを見せてやった。

 

 

「これっ、ブラックカード!?」

 

 

なぜ小学生が? という叫びを放ちながらもカードの照会をする店員。

そしてその数十秒後、店員は信じられないという顔でひかるにカードを返す。

 

 

「どうも♪」

 

 

ひかるは口元に笑みを浮かべたまま店を出る。

そしてそのまま八神家に向かって進路をとる。

 

朝家をでてから帰り着くまで約五時間。

もちろんはやてはまだ学校から帰ってきてはいない。

 

それを承知の上でひかるは更に足を速める。

 

「楽しみだねぇ、これは」

 

ぼそりと呟いた言葉にはいったいどのような意味がこめられているのか、

それはこの後、ひかるから赤色の宝石を渡されたはやてだけが知ることだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

あとがき、

 

 こんにちは、あとがきが少ない作者です。

 

今回のこの作品は柚月さんからのリクエスト作品となっています。

 

そこで書きたいことが、というか謝罪が一つ。

まずこれって『平凡』な一日じゃないよね!?

それと転移魔法使うこいつの警戒心の無さは何?

ノリで書いてしまったがブラックカードは普通小学生は持ってません!

 

とまあ突っ込みどころ満載の文章となってしまいました。

 

柚月さん、ごめんなさい、局ラジきいてたら変な文になってしまいました。

修正も効きません、本当にごめんなさい。

 

こんなアホな私なんぞでよかったらこれからもよろしくお願いします。

 

 


 

 

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